介護施設費用と相続——親の資産を使い切っても大丈夫?生前贈与・遺産分割への影響

介護施設費用で親の資産が減ることは相続にどう影響するのか。生前贈与とのバランス、遺産分割時に起こりやすいトラブルを解説する。

介護費用で資産を使い切ること自体は問題ない

介護施設の入居一時金・月額費用は総額で数百万〜1,000万円を超えることもあり、親の資産が介護費用で大きく減少・枯渇するケースは珍しくない。結論として、本人の介護のために正当に使われた資産であれば、それ自体が法律上問題になることはない。相続財産は「亡くなった時点で残っている財産」が対象であり、生前に適切に使われた分は相続財産に含まれないのが原則だ。

相続トラブルに発展しやすいパターン

  • 特定の子どもだけが親の通帳を管理していた場合:他の相続人から「使い込みではないか」と疑われ、相続開始後にトラブルになりやすい
  • 介護費用の支出記録が残っていない場合:領収書や通帳の入出金履歴がないと、正当な支出だったことを証明しにくい
  • 介護に貢献した相続人とそうでない相続人の間で不公平感が生まれる場合:介護を担った子が「寄与分」を主張しても、他の相続人の同意が得られず揉めることがある

トラブルを防ぐための対策

  1. 介護費用の支出は必ず記録に残す:領収書の保管、通帳の入出金履歴をこまめに整理しておく
  2. 資産管理を1人に任せきりにしない:可能であれば他の相続人にも定期的に収支状況を共有する
  3. 成年後見制度・家族信託の活用を検討する:親の判断能力が低下した場合、第三者や家族信託の仕組みを通じて資産管理を透明化できる
  4. 介護の負担が大きい相続人は「寄与分」の主張を視野に入れる:介護日誌や介護保険サービスの利用記録と合わせて、負担の実態を示せる資料を残しておく

生前贈与との関係

  • 介護費用に備えて資産を残しておきたい一方、相続税対策として生前贈与を進めたいという考えとはトレードオフの関係になりやすい
  • 生前贈与をしすぎて介護費用が不足すると、子どもが費用を立て替えることになり、後の遺産分割で「立て替え分の精算」を巡るトラブルの原因になることがある
  • 生前贈与を検討する際は、介護費用として必要な資産額を先に見積もったうえで、残りを贈与に回すという順序で考えるのが現実的だ

まとめ

介護施設費用で親の資産が減ること自体は問題ないが、支出記録が不透明だと相続時のトラブルの火種になりやすい。資産管理の透明化と記録の保存を徹底し、生前贈与とのバランスも考慮しながら、家族間で早めに情報共有をしておくことが円満な相続につながる。

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